近視について
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  • 近視治療について
  • 仮性近視(治る近視)

近視について

★近視の割合は?

私たちの目は、生まれてから成人に至るまで眼球は徐々に成長していきます。生まれたときは軽度の遠視ですが、眼軸長(目の長さ)が長くなっていくにつれて目の構造上、近視になっていきます。

また、私たち日本人は欧米の諸外国と比べ近視自体の有病率が極めて高いようです。H26年度の文科省の発表では、0.7未満の割合は、幼稚園児9%、小学生19%、中学生41%、高校生51%となっています。

★近視が進行する原因は?

近視の進行に関して世界中で様々な研究がなされています。アメリカやオーストラリアなどで行われた信頼性があるコホート研究を要約すると、
近視の進行は
1)遺伝的因子にもっとも影響を受け、2)田舎より都市部の方が速く、3)近業(DSやマンガ、勉強など)の程度が強いほど速く、4)戸外活動(外で遊ぶ、スポーツするなど太陽光を浴びる)により発症が抑制され、5)IQや学歴と相関があることが明らかになっています。

例えば、両親共に近視の子供は、両親いずれも近視でない子供に比べ、近視になるリスクが8倍高く、片親のみが近視の子供は、両親いずれも近視でない子供に比べて、近視になるリスクは2倍高いことが明らかになっています。

★近視の進行予防は?

近視の進行を完全に抑制することは現時点では不可能だと思います。そのなかでも比較的できそうな事項をまとめてみました。

  • 本やノートと目の間を30cm以上はなす。
  • 鉛筆はHB以上の濃いものを使い、字をあまり小さく書かない。
  • 暗いところで本を読んだり字を書いたりしない。
  • 乗り物の中で本を読んだり、寝転がって本を読んだりしない。
  • 部屋の明かりは、白熱電球なら40~60W、蛍光灯なら15~20W以上が目安です。
  • 机と椅子は自分の体にあった物を使う、姿勢に気をつける。
  • テレビは離れてみる。長時間見ない。見るときは、30分毎くらいに休憩を入れる。
  • ゲーム(特にDS)は極力しない。近業が長時間続く可能性高いです。

★近視の進行予防治療法は?

様々なことが言われていますが、近視進行の原因である眼軸長伸展(目が大きくなること)の抑制効果がはっきりと確認されている治療法には、1)アトロピン点眼、2)オルソケラトロジー、3)累進屈折力眼鏡があげられます。

当院では、1)2)の治療を行っています。

マイオピン オルソケラトロジー

近視治療について

近視になってしまった場合、どのような矯正方法があるのでしょうか。近視の矯正法としては眼鏡が一般的です。眼鏡は目に触れることなく近視や乱視を矯正することが出来ますので最も簡便で便利な矯正方法と言えます。成長期(こども)の眼鏡、中年期の眼鏡、中高年の眼鏡は考え方が若干異なります。

次にコンタクトレンズが 挙げられます。現在、国内のコンタクトレンズ装用者は1500万人以上と言われ、かなりの方が使用しています。眼鏡と異なり目に直接触れて近視や乱視を矯 正しますので、アレルギー性結膜炎やドライアイを起こす方がいらっしゃいます。また、不適切な使用法などで角膜感染症などを引き起こすこともあり重症化し た場合は後遺症が出る可能性もあります。適切なコンタクトレンズの使用を心がけ、定期的に眼科検診を受けることで、合併症をなくし快適に生活することが出 来るようになります。

基本的に当院ではまず眼鏡での矯正をお薦めしており、希望の時がある方には合併症のことを理解して頂いた上でコンタクトレンズを処方しております。

その他のオプションとしてオルソケラトロジーやレーシック、有水晶体眼内レンズ(ICL)などがあります。
当院ではオルソケラトロジーを行っております。オルソケラトロジーとは寝ている間にコンタクトレンズを装用し目の屈折を変えることで日常裸眼で過ごせるという治療法です。ホコリのする場所で仕事をしなければならない方やスポーツされる方が適しています。
また重症でないドライアイの方やパソコンを長時間する方でコンタクトレンズが辛い方など、通常のコンタクトレンズが適さない方はオルソケラトロジーも一つの方法です。

また強度の近視の方は眼鏡での生活が辛い場合があり、ドライアイやアレルギー性結膜炎、ホコリの中での仕事が多い方などは有水晶体眼内レンズ(ICL)という選択肢もあります。

仮性近視(治る近視)

★仮性近視とは

まだ小さいお子さんの場合、うまくピント調整が出来ずに、本当は近視ではないのにあたかも近視のように指摘される仮性近視の場合が時々あります。

近くのものを見るときには、眼の中のレンズ(水晶体)がふくらんで厚くなります。この調節は、毛様体筋という筋肉が緊張したりゆるんだりしながらレンズのふくらみ具合を調節しています。本を近づけて読みすぎたり、長時間ゲームをしたりするとこの筋肉が縮んだ状態が続き、レンズが薄くならないために遠くが見え にくくなってしまいます。これを調節緊張といい、仮性近視と呼んでいます。

短期の調節緊張による仮性近視であれば、正しい治療と生活習慣の見直しで回復も可能です。小学校低学年の子供など、低年齢ほど仮性近視の割合が多いとされており、年齢が上がるにつれて、仮性近視の確率は減っていきます。

★仮性近視の検査

仮性近視かどうかを調べる方法は、一時的に調節を取り除いてしまうサイプレジンという点眼を行います。点眼することにより本来の屈折が分かりますので、その検査にて近視が減るお子さんは、点眼治療等を行うことで視力の回復が得られます。就学前や小学校低学年のお子さんに時々見られますが、小学校高学年以降になると本当の近視の割合が多くなっていきます。検査後半日くらい眩しくなり、ピントがあいにくくなるといった状態になりますの で、土曜日などをお勧めしています

★仮性近視の治療法

仮性近視と診断された場合は点眼治療やワックなどの訓練を行いますが、本物の近視に対しては治療効果がないため、基本的に治療を行っておりません。しかし、仮性近視かどうかの検査をご希望されず、とりあえず治療をご希望される方も多くいらっしゃいます。その場合は視力が改善するか どうかは分かりませんので、1,2ヶ月治療を行っても視力の改善が見られないお子さんは、本物の近視になっていると判断し、本人が不自由を感じていれば、 眼鏡を作ってあげると良いでしょう。

仮性近視については、専門家の間でも意見が分かれるところで、全く存在しないという医師もいます。しかしながら、調節緊張の目薬 や、ワックなどの訓練で回復するお子さんがいるのは事実で、時に小学校高学年でも仮性近視であることもあります。どちらが正しいというのはありませんの で、当院では、上記を踏まえ、検査後必要な方、ご希望がある方などに下記治療を行っております。

★目薬による治療

毛様体筋の緊張をとる目薬(ミドリンMやミオピン)を点眼します。点眼後30分から1時間で毛様体筋の緊張が取れます。それを毎日繰り返すことで、毛様体筋が緊張しっぱなしにならないようにします。

★ワックによる望遠順応治療

ワックという機械を使い、毛様体筋の柔軟体操及び望遠順応を行います。機械をのぞいて両目で遠近感のある写真を見て頂きます。5分間に6枚の写真が入れ替わりますので、お子さんでも飽きずに治療できます。写真が離れたり近づいたりするのを目で追っているうちに、毛様体筋がゆるんだ り、縮んだりを繰り返し、緊張が取れ、レンズ(水晶体)も厚みの変化を繰り返して、仮性近視の改善を促します。一度、ご両親も体験して頂くと良いと思います。

学校検診でたくさんのお子さんが受診されます。単に視力を知りたいだけの方、仮性近視かどうかの検査をご希望される方、検査をせずに点眼治療をご希望の方、眼鏡をかけたい方、様々です。 子供の近視に対する考え方は医師も保護者の方も様々ですので、医師と相談の上、方針を決められることをお薦めします。